HOME > 3本足のルー > ルーの誕生

ルーの誕生

 最初に難なく生まれたクー(メス)は、気がつくと自力でナナのおっぱいにたどり着き、胸に吸いついていました。クーンクーン泣いて、ナナは一生懸命舐めて面倒を見ていました。全身まだ湿っていましたが黒と白の毛皮で覆われているのが確認できました。

 ところがそのあと2匹目がなかなか生まれてきません。犬は安産と聞いていたし、1匹目は何の問題もなく生まれたのに、2匹目はどうしてしまったのか・・・・・最初のお産から3時間くらい経ったころ、ふと気がつくと動かないぬるぬるした物体をナナが一生懸命舐めています。よく見ると仔犬のようです。ナナは羊膜を食べて取ってやっているのです。さらによく見ると、赤い血肉の塊のようなものが目に入りました。一体何なのか?私は小学生、中学生の時、解剖が苦手で、針をさすことも、鋏を入れることも、解剖された体内の血の滴るような内臓を正視することもできませんでした。その時の感覚がよみがえりました。まさに血の滴るような肉の色、私の血の気が一瞬サーッとひき、正視できませんでした。動きもせず、泣きもせず、時折ヒックと痙攣のような動きをするだけでぐったりした仔犬。さらによーく見ると足が3本しかありません。もう1本の所が赤い血肉の塊なのです。私は絶対奇形!と判断し夫に電話しました。いつものことながらタイミングの悪い夫はつかまらず、夫の友人があちこち探してやっと連絡が取れましたら、夫は電話の向こうで「間引け!」と言います。

 母犬のナナは、この仔犬(ルー)の羊膜を食べ終わると、どういう訳か動揺し始め、そのうち、先に生まれたクーの育児を放棄し、柵の外に脱出してしまいました。私がナナの首輪をひっぱり、柵内に戻そうとしても、頑として抵抗します。明らかにルーのことを嫌がっている様子。ナナもこの仔は育たないと判断したのか!と思い、仕方なく、ルーを1匹だけ段ボールに移し、お産の場所から離し、ナナに何とか育児に戻るよう促しました。ルーを引き離すと、ナナは落ち着きを取り戻し、再びクーの世話を始めました。

 ヒックヒックと痙攣のような息のルー、そのうち息も絶えてしまうだろうと思いました。ところが、驚いたことに、しばらく経つと自分の力でちゃんと息をし始め、・・・・・・と、クーンクーンというかわいらしい泣き声ではなく、ギャーギャーわめき始めました。すると、その声を聞いただけで、ナナはまたパニックに陥ります。止むを得ず、ナナが聞こえないくらい遠いところ、厚い壁を隔てた我々人間のトイレの隣、洗面所の奥にルーの段ボールを移しました。ルーの気配がしなくなると、ナナは再び落ち着き、クーの世話に専念しました。

 ルーは生まれてから、一滴のおっぱいも飲まず、母犬から引き離されました。夫は「間引け!」と言ってます。生まれてから飲まず食わずでは、そのうち、2,3時間もすれば力尽きで死んでしまうだろう、と私は思いました。でも何だかかわいそうなので、500mlのペットボトルに温かいお湯を入れ、タオルを何枚も何枚も敷いた段ボールの中に、あんか代わりに置いて、温かさだけは保ってやりました。

 篤志の方々のご寄付により、フォルテピアノが、西方音楽館 木洩れ陽ホールに設置されました。
 クリストファー・クラーク1994年製
(A.ヴァルター1795年モデル)
 故小島芳子愛用の名器



 





「3本足のルー」が完成しました。ルーが教えてくれたことは、「子供が育つ」ということ、さらに「人間が育つ」ということへの、励ましとヒントになりました。