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ルーの傷

 生まれたその日に、麻酔なしで縫われた傷。皮膚より骨が先へ出ているのを、無理やり引っ張ってくっつけた傷。縫合直後は、傷が塞がっているように見えても、ルーが動き、またナナが傷を舐めてやると、あっという間に傷は開きます。生まれて3日後には再び動物病院へ連れて行き、縫合してもらいました。もちろん麻酔なしです。

 同じことを何度繰り返したことか・・・・・。でも、何度繰り返しても結果は同じでした。家に戻ると、傷はあっという間に開きます。縫合の度に、ルーはその痛さに泣き叫びます。そのうち、縫合から帰ってくると、ケージの隅にうずくまって、ガタガタ震えるようになりました。もう可哀そうで、見ていられません。

 家族で話し合い、もう縫合はやめよう!と決断しました。生まれる時に痛い思いをし、生まれた後も何度も痛い思いを続けては、ルーの心が歪んでしまう、と思ったからです。縫合を諦める代わりに、傷口から黴菌が入らないよう、細心の注意を払う、という、非常に神経を使う世話が始まりました。
 傷のある動物は、自然界では、自分で(あるいは母親が)舐めて治します。でも、舐めても治らぬほど重症で、さらに黴菌が入って悪化した場合、ただ死を待つだけの存在となるのでしょう。母親も見放し、他の兄弟からも邪魔者扱いされ、より強い丈夫な兄弟だけ生き残るのでしょう。強いものだけが生き残るのは自然界の厳しい、また当然の掟です。

 ルーは傷ついた体で、辛い思いをし続け、兄弟たちのおっぱいをめぐる生存競争にも負け、次第に、自分は生きていてはいけない存在、と思い始めたかのようでした。

 篤志の方々のご寄付により、フォルテピアノが、西方音楽館 木洩れ陽ホールに設置されました。
 クリストファー・クラーク1994年製
(A.ヴァルター1795年モデル)
 故小島芳子愛用の名器



 





「3本足のルー」が完成しました。ルーが教えてくれたことは、「子供が育つ」ということ、さらに「人間が育つ」ということへの、励ましとヒントになりました。