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佐藤俊介 バロック・ヴァイオリン・リサイタル
2010年10月29日
佐藤俊介 バロック・ヴァイオリン・リサイタル
上野学園 石橋メモリアルホール
ホールが丸ごと消えてなくなってから、何年たったのだろうか?新しく、上野学園事務棟の上に完成した「新石橋メモリアルホール」を、初めて訪れた。
中の形状は、旧石橋メモリアルホールに則り天井が船底型、ステージ正面には新ホール完成を待って解体保存されていた旧ホールのパイプオルガンが、その確固たる存在を示していた。
前評判を知らずに、たまたま東京へ出る用があったので立ち寄ったコンサートだったが、その衝撃的な演奏に、書き記しておきたくなった。
音楽が生そのものである、生きることが音楽そのものである、そんな演奏であった。若干26歳(多分)。まだ、人生の苦しみ、悲しみは、それ程知らないはずなのに・・・・・。
幸せである者が、幸せな思いのまま奏でる、どこかゆるんだ音楽が、今の私には、聴いていて耐え難い。真摯に生きるものが、自らの存在のすべてをかけて生み出す音楽。今の私は、そういう音楽が好きだ。
壊れそうな繊細さ、透き通る美しさ、思いのたけをこれ以上は無理と言わんばかりに音に託し会場の空気までをも揺り動かす緊迫した激しさ。
年齢、経験などとは関係なく、細やかに、深く、正確に感じ取る感性が、備わっているのであろう。しかも彼の音楽は、何を語りたいのか、こちらに明確に伝わってくる。
また、聴きたい。これから、どう熟成していくのか、その過程を捉えてみたくなった。
■プログラム
- W.F.バッハ:チェンバロとヴァイオリンのためのソナタ ロ長調
- J.S.バッハ:独奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004から(シャコンヌを除く4曲)
- C.P.E.バッハ:ヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタ ロ短調 H512
- 休憩
- モーツアルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K379
- ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24「春」
私にとりわけ強烈な印象を残したのは、C.P.E.バッハのソナタ、モーツアルトのヴァイオリン・ソナタ、アンコールで演奏されたウェーバー作曲ヴァイオリンのためのソナチネ第1番第2楽章、であった。