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櫻田亨リュートリサイタル
2009年12月5日
櫻田亨リュートリサイタル
皇帝のビウエラ 市民のリュート 近江楽堂
リュートは繊細な音楽を奏でることが可能な楽器、という認識が私の中にありました。もちろんそうなのですが、そんな思いが覆されるようなコンサートでした。
ビウエラの演奏が始まると、密やかに、でも豊かに、表情を変えてゆく、弦の細やかで美しいに音の綾に、心が囚われてしまいました。プログラム前半はすべてナルバエス作曲のビウエラの曲ばかりでした。
休憩を挿み、プログラム後半の一曲目もビウエラで始まりました。ナルバエス作曲「皇帝の歌」(ジョスカン作曲「千々の悲嘆」に基づく曲)です。その繊細な調べにうっとり聴き惚れてしまいました。
と、後半2曲目はノイジードラー作曲「ジョスカンの千々の悲嘆(つまり前曲と同じくジョスカン作曲『千々の悲嘆』に基づく曲)」を今度は、リュートで弾き始めました。私の固定観念が覆されたショッキングな瞬間でした。なんと乱暴で、ガサツな楽器だったのでしょう!表現のあり方がビウエラより遥かに大まかなで、元気のよい曲に向いているのだ、と思ってしまいました。リュート最後の曲ではフラメンコギターのような掻き鳴らしもありました。
ずっとリュートが続き、あのビウエラの調べが恋しく思っておりましたら、アンコールで再び、後半1曲目ナルバエス作曲「ジョスカンの千々の悲嘆」を弾いて下さいました。
これでなくちゃ!、今日の気分はこれでなくちゃ収まらない!という思いが私の中に滞っておりました。
とても狭い私的な部屋で、目の前で私のためにだけ弾いてもらいたい!という、恋の病にでもかかったような気分でした。
「今回はかなりマニアックなプログラムです。」と櫻田さんのお知らせにありましたが、まんまとその罠にはまってしまったかしら?・・・とも思いました。
(ビウエラはギターのような形で指でつま弾く弦楽器。15,16世紀、主にスペインで王侯貴族に好まれた楽器です。リュートは洋ナシ形の指でつま弾く弦楽器。16,17世紀ヨーロッパで、市民の間でも流行った楽器です。)